レメディの使い方ABC

神経・胃腸:アルセニカム Ars.

2010-01-07

あけましておめでとうございます。

いよいよ2010年が始まりました。
皆さんは、新年をどのように過ごされたのでしょうか?

京都には、初詣で賑わう神社がたくさんあります。
でも、私達は、人ごみが苦手なので、銀閣寺のそばの法然院に行きました。

銀閣寺に向かってまっすぐ東にのびる坂を登っていくのではなく、疎水沿ぞいに南へ向かう哲学の道の途中にあります。
桜の季節には、淡いピンクの花びらで埋るもれるところですが、寒空の中で裸の枝が震えている元旦には、人影もまばらでした。

この寺は、背の高い木々がそそり立つ参道を登って行ったところに現れるかやぶきの門をくぐるところから始まります。
そこからは、別空間。
階段を降りて入っていきますが、見下ろすと左右二つの白砂壇があります。
白砂を固めた砂壇には、いつも違った模様が描かれていますが、今回は、お正月にちなみ「福寿」という文字でした。
そして、その先は、石と水、木と苔で織り成す静寂な庭の世界です。

私が初めてここを訪れたのは10代の終わり頃でしたが、30年以上たった今も、このあたりの佇まいは、あの頃のままです。
ふと、年末に見た、過去のさまざまな事件や出来事の映像を編集したテレビ番組を思い出しました。
月日と共に、激しく変化するもの。長い月日にさらされながらも、変わらないもの。
この違いは、何なのでしょうか?
ダイナミックに変化していくのも力だけれど、変わらず維持しているというのも、見えない強い力によるものなのだと思いました。

そして、思いがけなく、私たちが「クラシカルホメオパシー」の学校をなぜ、京都で始めることにしたのかということを、再確認できる一日となりました。
その理念が、変わることなく100年続く学校としての基礎を作りたいと考え、京都という場を選んだのでした。
哲学の道が桜の花で満開になるころ、CHKは、3期生を迎えて、初めて3学年そろう学校となります。
ホメオパスを目指してがんばってみようと思われる方は、ぜひ、1月、2月の授業見学会にお越しください。

今年も、スタッフ一同、心を合わせ、全力投球でがんばっていきます。
2010年が、皆様にとって、素晴らしいものとなりますように。
そして、今年もどうかよろしくお願いいたします。

それでは、始めましょう。

「セルフケアコース 神経・感情から起きる不調に適するレメディ」その3

<アルセニカム>

このレメディの原料は、砒素化合物(三酸化二砒素)です。
とても毒性の強い物質で、現在では農薬、殺虫剤、防腐剤として使われています。

日本では、江戸時代から「銀の毒」「石見銀山」と呼ばれ、暗殺や自殺に使われていました。また、殺鼠剤としても使われていました。

ヨーロッパでも、強い毒性があり、無味無臭であるため、ルネサンスの頃からワインに混入するなどして暗殺などが行われていたという記録があります。

数年前、世間を騒がせた「和歌山カレー事件」は、ご記憶にあるでしょうか?
夏祭りに皆で食べるカレーの中に、砒素が入れられ、それを食べた多くの人が犠牲になりました。
あのとき、救急車で運ばれてきた患者をみた医者は、「食中毒」だと最初は思ったそうです。
激しい嘔吐と下痢。
焼けるような痛みとのどの渇き。
砒素は、このように、食中毒のような症状を健康な人に起こす力を持っています。(もちろんレメディは、超希釈していますから安全ですが)
そして、砒素のレメディであるアルセニカムは、食中毒のときに選ぶNo.1レメディなのです。

Like cures like. 似たものが似たものを治す。

まさに、類似の法則です。

食中毒、殺人、暗殺、自殺。
このような出来事が皆さんの周りで起きたとき、皆さんの心の中には、どのような感情が立ち上がって来るでしょうか?

“New Synoptic One”(有名な入門的薬効書)のアルセニカムのページには、大きい太文字で“INSECURITY”と書かれています。
Securityの前にinがついている言葉です。
セキュリティって、もう日本語になっています。安全や安心といった意味の言葉。
これを、なくしてしまったという状態が、このレメディの「マインド」の中心です。

自分が立っているところが安全ではないとすれば、人はどのような行動にでるでしょうか?
アルセニカムの人は、落ち着きがなくイライラして気難しいです。
そして、たくさんの恐れをもっています。
死ぬこと、病気、泥棒、一人になること。
そして、自分の存在を脅かすあらゆることを、恐れて避けようと、排他的になります。
あれこれ心配なので、周りの人には口うるさく、自己中心的です。
失うこと、奪われることを恐れていますから、所有欲は強く、けちんぼう。
計算高く、気前のいいときは、必ず見返りを期待しています。
自分の快適さを求めます。
周りの人に対して、自分を安心させることを求めます。
病気になると、医師にしがみつき、大丈夫だといわれても、なかなか信じることができません。
完ぺき主義で、潔癖症。

“New Synoptic One”の精神症状の項目を羅列するとおおまかこういう人になります。
なんだか、とても嫌な人ですね。
でも、これは病的になったときの描写です。

アルセニカムの人が、調和のとれた良い状態であれば、とても有能なサラリーマンかもしれません。
いいかげんな仕事は絶対にしません。神経の行き届いた、きちんとしたことをしてくれます。安心して任せられる部下であり、頼れる上司となります。

また、良妻賢母型の主婦かもしれません。
きれいずきで、几帳面。
快適な環境を家族に提供し、家計の管理もしっかりしている頼もしい奥さんであることも多いでしょう。

砒素という物質も、人間社会の中にあり、あるときは恐ろしい毒薬として殺人や食中毒を起こすものですが、一方、殺虫剤や殺菌剤、防腐剤、として私たちの清潔で快適な生活を支えてくれるものでもあります。

アルセニカムのタイプの人も、まわりを破壊してしまうような人となってしまう場合もありますが、調和のとれた良い状態であれば、会社や家庭が円滑に回っていくために、なくてはならない人です。

体質的には、寒がり。
冷えると症状は悪化し、暖めると楽になります。
のどは、渇くのですが、ガブガブと飲むことができず、チビチビと飲みます。
冷たいものを嫌がり、暖かいものを欲しがります。
鼻水は、透明で刺激性があり、皮膚を荒らしてしまうこともあります。
症状は、深夜に悪化します。人の心に不安がつのる丑三つ時に弱い人です。
また、症状の出方には、周期性があります。
2週間ごとに悪くなったり、毎年ある時期に悪化するような人。

不安が強く、排他的な気質は、身体面でも同じパターンで表現されます。
異物を、必要以上に排除しようとすることによって起きる、アレルギー的な疾患です。
周期性を持った、花粉症にも、なりやすいです。

皆さんのまわりに、こういった方はいらっしゃいませんか?

歴史上の人物では、ヘレンケラーを導いたサリバン先生や、モーツアルトのお父さんがイメージキャラクターです。
アニメの「アルプスの少女ハイジ」にクララの家庭教師として登場するロッテンマイヤーさんも、完ぺき主義で、潔癖症、口うるさく厳しいところなど、アルセニカムを疑いたくなる人物です。

アルセニカムは、私の母にとって、何度も救世主となってくれたことがあるレメディです。
私の母は、典型的なこういったタイプの人物です。
体調が悪化して、苦しみもだえだすのは、必ず深夜です。
とにかく、猛烈な寒がり。アイスクリームを食べたことは、見たことがありません。
3人兄弟の最初の子供に生まれた私は、愛情と共に、母親の不安も一心に受けて育ちました。
きっと、そのせいだと思うのです。
毎月、扁桃腺を腫らして高熱を出す子供でした。
「今月は、大丈夫かな?」と思った日には、夕方から元気がなくなって、高熱を出したそうです。
母から独立して暮らす今では、まったくそういうことはありません。

セルフケアコースは、42種類のレメディキットを使いこなせるようになるのが目標です。
それぞれ、個性的なレメディばかりですが、私にとってこのレメディは、特に思い入れの強いものです。
私自身は、一度もお世話になったことがありませんが。

次回も、とても個性的なレメディをご紹介しますね。
どうか、お楽しみに!