今月のレメディ

『チキータCic.(Cicuta virosa)』

Cic.

こんにちは。CHK荻野千恵美です。

駅に向かう途中、山の中腹あたりに見える大きな銀杏の木があるのですが、ついこの間まで、澄み渡る秋の青い空を背景に、光を放つかのように、金色に輝いていました。でも、その輝きは知らぬ間ににくすんできたと思ったら、あっという間に、散ってしまいました。

いよいよ師走も半ば。寒さもこれからが本番を迎ですね。
そして、クリスマスやお正月と、最もにぎやかな行事が続く季節となります。皆さんは、どのようにお過ごしの予定でしょうか?

今月は、チキータCic.(Cicuta virosa)をご紹介します。

私のブログでは、2018年に投稿しています。
https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12375665031.html

このレメディは、ドクゼリから調整されます。
全草に強い成分を含みますが、特に根茎部分が強く、レメディの原料は、成分の最も強くなる、開花期の根茎を使います。
小川や沼、湿原など、水辺の湿ったところに群生しています。
食用のセリに外見はそっくりで生息場所も共通しているので、間違って食べてしまう事故は後を絶たないそうです。
一般名は、Cow baneと呼ばれていますが、身体の大きな牛でも、この植物の根を少し食べただけでも倒れてしまうというところから、この名が付きました。
この植物の特徴は、主に神経系と皮膚、筋肉に作用することです。

そして、Cic.の適用症状は、これらの成分特徴を反映します。
一番の特徴は、痙攣・てんかんを引き起こすことです。
強直性痙攣という、発作中に身体が反り返って、手足を強直させる痙攣。
間代性痙攣という、筋肉がぴくぴく動き、ガタガタと手足の屈伸を繰り返すような痙攣。

頭部外傷後の不調というのもこのレメディの適用症状です。
そして、斜頸、斜視、発達(精神)遅滞にも適用されてきました。
子供に多い特徴的な湿疹にも適用されます。頭や顔に黄色い汁が出るような湿疹ができ、それが固まってカサブタができるような症状。

授業では、これらの症状をレパートリー(レメディ検索辞書)を引きながら確認していきました。レパートリーに習熟するのは、ホメオパスとして的確なレメディを見つけるための基本的なスキルです。
レパートリーは、最初は辞書で慣れていきますが、現代ではコンピューターソフトもできていますので、一旦慣れたら、とても便利です。

では、適用精神症状は?
セリ科のレメディはいくつかあって、セリ科に共通する感覚や反応の仕方があります。
Umbelliferセリ科 という言葉は、Umbrella 傘 から来ているそうです。傘に隠れて、自分を見せないようにするような人。
CHKでは、セリ科のレメディとしてCicのほかに、コニウムCon.とイズーサAeth.を学びます。
コニウムCon.は、年をとったり、パートナーを失ったりして、だんだんに心身ともに、枯れて固まっていくような人マッチします。
イズーサAeth.は、この世の人間と付き合っていくことが苦手で、動物への愛情にエネルギーを注ぐ人です。いずれも繊細・超敏感な人に向くレメディたちです。

チキータCic.には「頭部外傷以来の発症」という症状がありますが、他に以下のような精神症状も持っています。

MIND; AILMENTS from; fright or fear  
(怯えや恐怖からの発症)
MIND; HORRIBLE things, sad stories affect her profoundly
(恐ろしいことや怖いことから深く精神的影響を受ける)
チキータCic.は、頭部外傷だけでなく、恐怖、恐ろしい出来事によって、傘のなかへ引きこもってしまったようなとても繊細さと敏感さを持っている人だといえるでしょう。

チキータCic.で重要な精神症状には以下のようなものがあります。
MIND; CHILDISH behavior. 子供じみた振る舞い。
MIND; COMPANY; aversion to, agg.; avoids the sight of people. 人を避ける
MIND; CONTEMPTUOUS; mankind, for  人類への軽蔑
MIND; HATRED 憎しみ
MIND; PLAY; desire to, playful; toys, with childish
子供のおもちゃで遊びたい
MIND; SUSPICIOUSNESS, mistrustfulness
疑い深さ
これらの症状から、チキータCic.の全体像をイメージすると
「とても怖い体験をして、ひきこもり、人目を避け、疑い深くて、憎しみを持ち、自分がかつて安心して過ごせた子供時代のような生活を望む人。」といった人物像が浮かんできます。

インドの巨匠Dr.サンカランは、チキータCic.のテーマを、
「過去に他人、特に男性に深く手酷く傷つけられ、子供のような状態に逆行し、世界の残りを締め出している。極端に男性を恐れ、憎み、軽蔑する。誰かが近づくと、興奮したり、暴力的になったり、痙攣状態になる。特に恐ろしいことや悲しい話に影響を受ける。」と簡潔に表現しています。
また、同時に興味深い症例も紹介してくれています。
「顔にジクジクした浸出液をだし、固まって痂疲を形成する8歳の少女。
彼女は、また、非常に引っ込み思案で無口だった。
彼女の問題が始まる2,3年前に、彼女の父親が、とても恐ろしい話を聞かせ、少女はとてもショックを受けた。」
この少女は、チキータCicをとった後、発疹が治癒しただけでなく、精神的にもとても明るく快活に変化したということです。