今月のレメディ

縁の下の力持ち「Graphites (Graph./グラファイト)」

鉛筆画像

今年は、春が早かったですね。
桜の季節を皆さんはどのように過ごされたのでしょうか?

こんにちは、荻野千恵美です。

私たちは、今、桜の名所と言われている三井寺の近くに住んでいます。
三井寺のすぐそばには、満開の桜の景色で有名な琵琶湖疎水もあります。

今年は、電車で15分ほどの距離の比叡山坂本まで桜を見に行くことにしました。
ここの桜はそれほど知られてはいないので、
三井寺よりもうんと静かに桜を楽しむことができると思ったのです。
比叡山坂本駅で降り日吉大社までの参道を歩きましたが、
それはそれは見事な春の景色でした。

比叡山坂本は、比叡山延暦寺の門前町として栄えたところで、
通りや里坊に見られる石垣の美しいところです。

https://www.hieizansakamoto.jp/ws-anoisizumi.html

この石垣の作り方を「穴太衆積み」といい、
古くから隣町の穴太に住んでいた渡来人の石工技術集団によるものだそうです。
私は、この「石積の町」と言われている坂本が大好きです。
自然石を組み合わせた石垣は長い年月かけて育った苔にやさしくつつまれ、
近くを流れる小川の水は清らかで、比叡山から吹いてくる風も、澄み渡っています。

多くの自然石で積まれているのが特徴ですが、
この石垣を眺めるとき、これらを積んだ名もなき多くの石工たちの、
声や息遣いが聞こえてきそうになります。
汗を流し、心を一つにして、大きなものを作っていく人々の集団がいたのです。

そして、そんな人たちは、今もたくさんいて縁の下の力持ちとして、
まじめに熱心に働いています。

今月は、こういった人たちとイメージと重なるレメディをご紹介したいと思います。

(2019年9月に私のブログに投稿したものです。)

https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12538755297.html

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Graphites (Graph./グラファイト)

原料は、黒鉛。
でも、鉛ではありません。正式名は、石墨。
ダイヤモンド・墨・石炭などと同様、炭素(C)の仲間です。

潤滑性・導電性・耐熱性・耐酸アルカリ性に優れていて、
主な用途は、鉛筆の芯、鉄道のパンタグラフ、自動車のブレーキパッド、
アルミホイル、乾電池の合剤、テレビのブラウン管の塗料など、
多くのものに使われています。
どれもあまり目にとまる存在ではありません。
縁の下の力持ちとしてあらゆる産業の基礎になる分野で活躍しています。

黒鉛を調べようとしたとき、黒鉛を製造する、
「日本黒鉛」という会社のサイトが出てきました。

https://www.n-kokuen.com/graphite/

ここの情報が、一番わかりやすかったです。
会社は、私が住んでいる滋賀県大津市にあるのですが、
とても実直な印象を受けました。

グラファイトらしさは、鉛筆の芯に、とてもよく表現されていると思います。
グラファイトという名前もギリシャ語のGraphein(書く)というのが語源のようです。
なぜ、鉛筆の芯は、書けるのでしょうか?
グラファイトがとても柔らかくはがれやすい物質だということです。
紙の表面は、植物繊維が折り重なってできています。
その繊維の隙間に、柔らかくはがれて、
グラファイトの粉が入り込むことで字がかれるのです。

グラファイトと同じ「炭素」からでいているのに、
分子構造が違うだけで、まったく違った性質を持つものがあります。
ダイヤモンドです。
すべての炭素原子が共有結合しているダイヤは、
縦に、横に強く結びつき、硬くてカチカチ。
一方、グラファイトは、平面的にはしっかり結合しているけれど、
層と層は結合力が弱く、とてもはがれやすいのです。

さて、このような物質を原料にするレメディにマッチしそうな人は?
「なんだか地味で・・・」
「身を粉にして働くイメージ」
「あまり色気がない」
「社会に役立つ人」
生徒さんたちからは、このような意見が出ました。

身体症状で有名なことは、「皮膚症状」です。乾燥したり、
肥厚したりしてひび割れる皮膚。不健康でちょっとした傷にも化膿したり、
治りが遅かったりします。アトピー性皮膚炎的な方も多いです。

皮膚といえばSulph.が有名ですが、Sulph.の人が暑がりなのに対して、
Graph.の人は寒がり。Sulph.の人が甘いものやスパイシーなものを好みますが、
Graph.は甘いものや塩辛いものを好まず刺激の少ないものをほしがります。
食欲旺盛で、空腹で悪化するのも似ています。
また、Graph.の人は、やや肥満気味。
消化器系にも問題を持ちやすく、鼓腸性の消化不良や便秘。
黒鉛は黒または灰色ですが、Graph.も、あまり色気のない人。
男女とも性交を嫌いがちで、男性の勃起不全にもよく適します。

古典的なGraph.のマテリア・メディカでは、シンプルで、あまり
深刻には悩まない人とされています。
地味な黒鉛の原石を思わせるような人かもしれません。

Focus(マテリアメディカ)の精神症状では・・・

IRRESOLITION(決断できない) TIMIDITY(恥ずかしがり)
Lac of self confidence(自信のなさ) Doubts(疑い深い)
という言葉が並びます。

これらの症状に高得点で出てくる共通のレメディは、控えめで自信なさげなタイプです。
加えて、気分の変わりやすさや気難しさを持ち、泣いたり感情表現する人。
見方によっては、Puls.のようでもあります。
しかし、Puls.が泣くのは、人の気を引くためですが、
Graph.はどうしたらいいのかがわからなくて泣きます。

Graph.のような鉱物レメディを理解する場合、元素周期律上では、
どこにいる人なのかという見方をすると理解が深まることがあります。
(専門コース高学年レベルですが・・)

Graph.は、「炭素」です。
「炭素」は、ホメオパシーの周期律表では、第2シリーズの10番目に当たります。
第2シリーズは、出産の過程になぞらえられて考えたりします。
陣痛が始まり、進んでいく中でのちょうど真ん中あたり。
胎児として子宮にとどまることはできないが、出て行く前の戸惑い・・・
そういうレベルにあると受け止めます。
そこから、「自己価値への疑問」というテーマが見えて来ます。

私は、生まれて、この世で生きてゆく価値があるのかどうか?

決断力のなさ、臆病さ、疑い深さ、自信のなさ、
心の変わりやすさの背景にあるのは、「自己価値への疑問」です。

「自己価値への疑問」という感覚は、ダイヤモンド(炭素)にもあります。
硬くて光り輝くダイヤモンドと柔らかくて黒いグラファイト。
レメディになると、こういった特徴は症状に反映します。
しかし、ダイヤを必要とする人は、グラファイトの人とはやはり違って、光った存在感。
でも、ダイヤモンドも「自己価値」について自信がなく、
グラファイト同様、苦しんでいる人です。

グラファイトは、勤勉である点でCalc.(カルク・カルブ)にも似ています。
しかし、Calc.が生活の安定の不安から勤勉であるのに対して、
グラファイトの勤勉さは、自分の価値を守るため、
というところからきているのだと思います。