今月の活動

『Aethusa cynapium(Aeth./イズーサ・セリ科)』

琵琶湖夜ザクラ

春になりましたね。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

CHKの荻野千恵美です。

1年間、私たちの週末の予定は、ほぼ専門コースの授業になります。

ただ3月だけは、特別セミナーや春の会など開催しますので、週末の予定はありません。
3月31日(日)お天気に恵まれてのんびり自宅の近くを散歩することにしました。

(写真は、琵琶湖疏水の夜桜)

例年なら、琵琶湖疎水も三井寺も、
桜の花びらで埋め尽くされる頃ですが、今年の開花は大幅に遅れていました。
花のつぼみはまだ硬く、用心深げに遠慮がちに、
花びらの開きかけた小枝が、ちらほら見られるだけでした。

咲いている桜はないかと歩くうち長等公園の片隅にある
「三橋節子美術館」に偶然たどり着きました。

https://www.city.otsu.lg.jp/manabi/bunka/nagarasosaku/index.html

さほど有名な方ではありませんが、京都市立芸大の日本画科に進み、
上村松篁や秋野不矩などの大家からの教えを受けた実力派の日本画家です。
彼女は、長等山の麓に居をかまえ、身近な自然や近江の昔話を題材にした
情感あふれる作品を残しています。
病のため、幼子を残して35歳の若さで世を去らなければならなかった方なのですが、
最晩年の作品の前にたつと、彼女の無念さと母としての深い愛情に涙が止まりません
でした。
今月も個性あふれるレメディをご紹介したいと思います。
2018年11月にブログに投稿した記事です。

https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12419963655.html

 

『Aethusa cynapium(Aeth./イズーサ・セリ科:ドッグパセリ)』

Aeth.は、ヨーロッパからシベリアにかけて原産の
セリ科の1年草植物を原料とするレメディです。
通称、ドッグパセリなどとも呼ばれてきました。

CHKでは、3年次以降で学ぶレメディです。
生徒さんには、事前学習として原物質について調べてもらうことにしています。

生徒のみなさんから発表していただいたことは・・・

・ヨーロッパ中世、コレラの治療に使っていた。
・神経を乱す作用がある。
・間違って食べると吐き気を催す。
・ハーブ療法として鎮静作用に使われていた。
・人間の健康を乱すことがあるが、ヤギ・羊・馬・牛には大丈夫。

などでした。

そのうえで「Aethusa cynapium」の画像を見ていただきました。

https://search.yahoo.co.jp/image/search?rkf=2&ei=UTF-8&gdr=1&fr=wsr_gs&p=aethusa%20cynapium

今までに学んできた、同じセリ科のCic.シキータやCon.コニウムの画像も
映しましたが、どれもそっくりです。
いずれも白いレースのような可憐で繊細な印象を持つ花を咲かせます。
一見した姿はそっくりですが、その症状は似たところもあり、
ずいぶん違っているところもあります。
まるで、顔は似ているけれど、性格や体質はずいぶん違う三姉妹のようなので、
私は、これら3つのレメディをセリ科3姉妹と呼んでいます。

(参照:https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12375665031.html)
ちなみに、ナス科も代表的な3つのレメディ(Bell.Stram.Hyos.)があります。
激しく、暴力性があり痙攣症状という共通症状を3つは、ナス科3兄弟と呼んでいます。

100年ほど前にアメリカで活動したホメオパシーの中興の祖と称される
J.T.ケント博士は、このAeth.イズーサを「夏の乳幼児のコレラ」に使いました。
飲んだお乳が、かたまりになって、口からあふれ出るような激しい嘔吐。
そして大量の緑の便。
激しく暴力的な症状の後、子供は衰弱して眠り続けます。
このレメディのきわだった特徴を表現する症状そのものです。

「暑い気候で悪化」「ミルク不耐性」「激しさ」「嘔吐」「下痢」「衰弱」「嗜眠」
その特徴的な症状からは、
何かが「あふれ出る」ようなエネルギーと、出た後の衰弱という質感を感じます。

関連レメディでは、
「ミルク不耐性」という点では、Sil.シリカに似ています。
Sil.の原料は二酸化ケイ素。自然界には、透明な水晶として存在します。
このSil.に適する人は、異物に対して「排他的」ですが、
Aeth.のようにあふれ出るような激しさはありません。

ミルクのような基本的な栄養物を「拒絶」する。
それさえ受け入れられない敏感で繊細な人。

Aeth.の人の、受け入れられなさは、人間関係や知識などにも及びます。

かれらは他の人とうまく付き合っていくことが苦手です。
引きこもりになりやすいタイプのレメディです。
しかし、強い情感・愛情は持っていて、その情愛は、動物に向かいます。

授業では、このレメディで元気になられた印象的な方のご紹介をしました。

その女性は、猫を飼っていて、避妊手術をすることを受け入れられず、
たくさん子供を産ませてしまい、家族と、もめていました。
ある日、彼女は縁側で猫と遊んでいたのですが、その様子を聞いた家族は、
彼氏と携帯でしゃべっているのだと思っていたそうです。
人間との付き合いは不器用だけれど、動物とは細やかに心をかよわせる人です。
彼女の考えでは、人間は自然を破壊していく存在。
動物は人間に支配される被害者という構造になってました。
でも、彼女は、Aeth.によってだんだん健康になると、
避妊手術へのこだわりは緩み、社会にもうまく適応できるように変化して行きました。

Aeth.の人は、知識などを消化吸収する力も弱く、やや勉強が苦手なタイプです。
試験などのようにプレッシャーがかかることを非常に恐れます。

MIND; FEAR; examination, before(試験前の恐怖)

この症状は、みなさんもよくご存知の
Gels.(ジェルセミウム/イエロージャスミン)にもあります。
試験前に、恐怖心で心身ともに萎えてしまうような人に適します。
Gels.は、麻痺のレメディでもあります。
部分的には似たところもありますが、全体像は違います。

Aeth.を勉強して、「多頭崩壊」という現象について教えてくれた人がいました。
猫の避妊手術に反対で、家じゅう猫だらけになってしまうような人のことをいう
そうです。
家の環境は不潔極まりなく、ご近所さんにも迷惑をかけてしまうようになっても、
頑固に引きこもっているような人。

Aeth.は、100年前のアメリカ人医師J.T.ケント博士が小児コレラに使っていた
レメディです。
古典的なマテリアメディカでは、身体症状中心に記載されていますが、
私は、精神症状から何人かの方にこのレメディを提案してきました。

みなさん、本当に純粋な方ばかりです。そして動物愛にあふれた人。
もの言えぬ動物たちを放っておくことができず、手をさしのべずには、いられない人。
でも、現実社会では自分のするべき役割をうまく果たせない。人間社会が苦手な人たち。
CHKの基本テキストの「Frans VermeulenのマテリアメディカFocus」では
Aeth.の核心を以下のようにまとめています。

1.ミルクに耐えられない。
2.試験に怯える
3.衰弱と眠気を伴う病気。
4.白い鼻の線;口のまわりが青白い。
5.社会から引きこもる;動物に対する強い愛情と哀れみ。

人間関係はとても苦手ですが、とても人間らしいレメディだと思いませんか?

私は、こういう人が好きです。